商標登録で失敗する5つの場合

商標登録で失敗する5つの場合

弁理士業務で最も多いのは商標登録関連業務です(←リンク先参照)。
何をどう判断したらよいのか分からないと思います。どういう失敗があるのか、という観点から見ていくと分かりやすいのでは、ということでまとめてみました。

料金面、希望する権利が取れない場合、そして登録できない場合、にそれぞれ分かれます。まず登録できない場合というのは個人出願のケースが多いですが、その場合から説明いたします。

0.そもそも商標登録が必要でない場合もある

本当に商標登録すべきなのかどうか?と聞かれたら、依頼を受ける側としては、商売ですので「ぜひ登録しましょう」となることが多いでしょう。

そうですが、費用がかかるものですので、メリットとデメリットを総合的に勘案して決める必要があります。その辺の判断基準を下記ページの冒頭で解説しております。 → 商標登録サイト

1.個人で商標登録出願したときに多い拒絶理由通知

最近は個人の方が自ら願書を作成して商標登録出願をすることが増えています。出願願書と設定登録だけなら難しく無さげですが、落とし穴もあります。

拒絶理由通知が来たので対応してくださいと連絡を受けることが多いのですが、内容的に無理なものも多く、その多くは出願時点で弁理士なら当然に予測できたものです。
お金よりも時間の損失の方がビジネスにおいては大きいので、事前予測をすることが大事です。実際に聞く話について、その内容を挙げていきます。

商標法第3条柱書違反(使用意思が疑われるケース)

  • 指定商品数が多すぎる
  • 特定の要件に合致しないと指定できない商品役務

というケースで拒絶理由通知が来るようです。もっともこれは手続補正で事後的に一部削除をすればよい話です。ただ、後で要不要を判断するのも面倒ですので、はじめに絞っておいたほうが良いです。

商標法第3条各号違反(普通名称など、一般的名称の場合)

個人出願で失敗した、というケースの多くはこれです。

商品「パソコン」に指定商品「アップル」は本条違反になりませんが、
商品「りんご」に指定商品「アップル」は本条違反になります。

特に美容やマッサージ関連のサービスに多く見られますが、
サービス内容の新たな一般名称や、形容表現で商標登録を行おうというケースが多くみられます。このような場合は商標登録を受けることができません。

自分で判断して出願してしまわないで、
取れるかどうか専門家の判断を仰ぎましょう。
専門家なら普通に事前予測できるような話です。

事後的に意見書で何とかならないか、と相談を受けることがありますが、多くの場合は難しいです。

商標法第4条第11号号違反(先登録商標がある場合)

先登録については、完全一致についてはある程度サーチされて
いるようですが、類似範囲については漏れがあるようです。
類似商標が先に登録されていても、登録することはできません。

2.事前調査が雑な弁理士もいる

商標登録は、特許と違って出願前にサーチをすることで登録可能性をかなりの確度で判定しておくことができます。
登録できるかどうかが事前に判定できれば、早めに商標を変更しておくこともできますし、商品名についても事前に手を打てます。

一方で、商標登録出願は、多くの場合は出願すればそのまま登録になります。
サーチはきちんとしないで、そのまま定型記載で出願登録するのが受任する弁理士としては効率的です。
もちろんサーチしないと審査の結果登録できませんでした、という結果も出てくることになります。

そこで、サーチの精度を上げることに手間をかけず、単に全額払い戻しにする、というビジネスモデルが出てきます。
そもそも拒絶されることが多くないわけです。平均化すれば確率的に利益になるという仕組みになります。

その一方で、どっちになるか分からないような案件もあります。
審査基準を見ると難しいように見えるものの、最近の事例からは登録可能性も考えられる、というケースについて、全額返金方式だとリスクがあるから受任したくない、という話になります。その辺の可能性を提案するのも、弁理士の業務と思いますが、価格優先だとそこが省略されます。

ビジネスは時間との兼ね合いもありますので、登録可能性について事前予測できるというのも重要と考えます。
全額返金方式のリスクは、その辺を全て含めて、お金を返したんだからいいでしょ、となってしまう点があることです。
また審査対応を真摯にするよりもお金を返したほうが早い、という判断もありえます。どうしても権利にしたい商標の場合、それは困る場合もありうるのではないかと思います。

後から何とかしてほしいと言われても挽回できない

指定商品の記載は、出願時の範囲内でしか補正できないので、後から追加や、大幅な変更はできません。また商標自体も変更は効きません。

返金されたからよいというものでもありません。商標登録によって保持されるサービスの方がはるかに大事です。お金だけならともかく、審査待ちの期間が無駄になってしまいます。

商標の場合、結果が出るのが早いですので、ダメなら出願し直しでもよいのですが、手続補正で何とかなるか、と言ってもなんとかならないケースも多いです。

よく意見書で何とかならないか、というケースもあるのですが、見解が分かれるようなものは意見書で争いますが、最初から明らかにダメなものを出願された場合は、どうやっても挽回しようがありません。

商標登録できない商品サービス名で事業展開した場合の損失

費用だけで済めばよいですが、多くの場合は商標権確保と共に、事業を既に進行させてしまうことも多いと思われます。その場合の無駄やコストは、商標登録コストよりも大きくなるでしょう。

以上、商標登録で失敗した場合の、事業上の損失について解説いたしました。次に、料金関係について説明いたします。

3.区分数が増えすぎる=全体として高額に

商標登録を考える際に、商品役務の区分という概念については、一応調べておいた方が良いと考えます。
→ 商標登録は2区分3区分と増えると料金も2倍3倍

出願の際に区分を選択するのですが、あれもこれもと広げすぎると、費用は全体として高額になってしまいます。

ある商標を取得したとして、その商標はあらゆる商品サービスについて
独占権が発生するわけではありません。例えばソフトウェアについて使う、
飲食業について使う、というように特定業種に対して権利が発生します。
どの業種に対して権利を発生させるか、というのが、商品であれば「指定商品」、サービスであれば「指定役務」と言われます。

この指定商品は1~34までの区分、指定役務は35~45までの区分に分類されます。商標登録出願の際には、指定商品、指定役務と共に、この区分を指定します。同一の区分内で複数の商品、役務を選択することができます。指定したい業種が多岐にわたる場合で、その業種が同一の区分に収まらない場合は、複数の区分を指定することになります。

ここで問題なのは、区分の数が増えるごとに料金が増えていく点です。
ですので必要な業種を網羅しながら、区分の数を最小化する、
というのがポイントになります。

自分で何となく指定商品を選んで3区分になることもあると思います。
これを弁理士に選んでもらって、1区分に収まることもあります。
どちらが最終的に安くなるかというと、弁理士に依頼する
方が安くなります。

特に第35類を勧めてくる弁理士には注意

あとは、一見業界最安値ですといいながら、区分の数が多くなる
ようにアドバイスする弁理士もいます。
区分の数が増えれば、手数料はx倍になりますから、十分ペイします。
当所はもちろん最小の区分数を提案しますが、
多くの区分数で提案するというトラップもあることは覚えておいて下さい。
具体的には、第35類はあまり必要ないことが多いです。

国内出願を格安業者で依頼された後、外国から当所に依頼というケースが
あるのですが、よく見ると区分数が必要以上に多いのですね。
結局安くないのではと思うのですが、区分数については注意が必要です。

4.指定商品、指定役務が不十分

上記のように商品、役務の指定が増えすぎると、
区分の数が増えすぎるという問題も発生するのですが、
逆に必要なものが網羅されていない
という問題もあります。

自分で出願される方に多いのが、特定の自社製品のみを指定して
それで終わりにしてしまうケースです。
しかしながら商品展開が多岐にわたっていくケースも多いです。
区分をまたいでまで最初から網羅しておく必要もないですが、
同一区分の範囲ではできるだけ様々な指定商品を選んでおいた方が良いです。
同じ区分なのに、別途権利を取り直しは余分な費用もかかりますし、
万が一別商品について先に取られてしまっては元も子もないので、
指定商品の選定は必要な範囲で十分に選ぶことが求められます。

5.価格表がない=高すぎることが多い

商標出願業務については、現在価格競争が激化しています。
その一方で価格競争の激化以前の料金体系でやっている
特許事務所の方が実は多数であるという現実があります。
その両者の価格差は、想像以上に大きいという状況が発生しています。

もちろん見積もりを取れば金額は分かりますが、
そんなにあちこちから合い見積もりを取る訳にも行きません。
安すぎるところには安すぎるだけの理由がある面もあります。
ただ言えるのは、料金表をウェブ上ではっきり載せている
特許事務所の料金は、業務内容との比較では割高ではない、
と推定されます。価格表を載せる意味がないなら載せないですし、
一応価格競争の波にもまれていると推定されます。

6.指定商品、指定役務の記載が定型の記載の転用のみ

指定商品、指定役務の記載については、定型の記載形式があるので、
それを単に移すだけで、大半の場合はカバーできます。
それをいいことに、テンプレ通りに写しておしまいにしている
特許事務所が案外多いようです。

定型の記載形式(短冊と言います)を移すだけなら、商標登録出願は
実は非常に簡単です。自分で出願される方なら、これに沿って
記載することをお勧めします。

しかし弁理士、特許事務所が単に丸写しのみでいいのかというと、
それはちょっと違う場合も多いかと思います。このように処理するなら
マニュアル化もできますし、低コスト化も図れます。
格安業者の大半はこういうやり方を採用しているようです。

ただ、商標で保護したい業態というものは結構新業態というものも
多くなってきています。この定型の記載形式は実は結構古いのです。
改訂は随時していますが、ベースとなっているものは昭和のかなり前
のものであるので、その記載に則ったとき、本当に保護されているのか
疑問であるという場合も多くあります。

以上の5点が、商標登録出願の際に考えるべき5つのリスクです。
馴染みがないとどれも同じに見えるかもしれませんが、
以上の点を考慮していただければと思います。
当所の商標出願業務ではもちろん以上の問題を起こさないように
手続いたしますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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