マドプロでは外国商標登録が割高になる場合
マドプロでは外国商標登録が割高になる場合
お客さんからのお問い合わせの中で、「外国で商標を登録する場合、
このマドプロってのを申請すればよいの?」と聞かれることがあります。
- 国数が多くなる場合にはマドリッドプロトコルの方が割安
2-3か国の場合、マドプロは割高になるケースがあります。 - 出願国数=マドプロ出願国数ではない点に注意。
特に台湾や香港に出願する場合、マドプロ締約国ではないので、
マドプロを経由することができません。これらを除いた国の合計で、
2-3か国程度となる必要があります。 - 典型的には、中国を中心とした地域、中国に加えて台湾、香港に出願、
というケースではマドプロはお勧めできないということになります。
マドプロ加盟国をチェックすることが大事です。
なぜ、こういう結論になるのか。 → お問い合わせはこちら
マドプロとは
マドプロとは、マドリッド協定議定書の略で、国際間で締結された条約です。
この条約に締結した国家間の間では、このマドプロ出願というものを
することができます。しかしながら、これは本来は例外事項であって、
通常ルートの出願では本来ありません。
海外で商標登録する場合には、それぞれの国で申請しなければなりません。
その金額の目安は、各国あたり、日本で商標登録する場合と同じくらいです。
この手続きに替えて、いわゆるマドプロ出願をすることができます。
マドプロの特徴は、スイスにある「国際事務局」に出願申請することにより、
指定国すべてについて商標登録をすることができる、という制度です。
マドプロによって料金が安くなる仕組み
日本の弁理士から国際事務局に手続きするので、それぞれの国の
現地代理人の費用が削減できるから安くなる、という仕組みです。
そもそもどんな料金の仕組みになっているのか。
- 通常の外国出願の手続きの流れは、
お客様 → 日本の弁理士 → 各国の弁理士(弁護士)→ 各国の特許庁
となるので、それぞれの段階で料金が発生します。
- マドプロでは、
お客様 → 日本の弁理士 → 国際事務局 → 各国の特許庁
となり、各国の弁理士(弁護士)の手続きが国際事務局に置き換わります。
したがって、各国の弁理士(弁護士)の手続きがなくなる分安くなるのです。
でも国際事務局でお金を取るんじゃないの?
という疑問を持たれたとしたら、それは正しいです。
マドプロによって料金が逆に高くなる仕組み
マドプロの場合に限って必要なのは以下の費用です。
国際事務局手数料
モノクロ 653CHF(=84890円)、カラーの場合903CHF
日本特許庁手数料(説明のため、国際事務局手数料に含めて考えます)
9000円
各国の出願では不要なこの料金がかかります。
付加手数料、個別手数料は説明のため、
現地特許庁費用に置き換わると仮定します。
現地代理人費用が、国際事務局の費用が安い場合は
マドプロがお得、という仕組みになります。
国際事務局手数料 | 現地代理人費用 | |
マドプロ | 払う | 払わない |
各国出願 | 払わない | 払う |
国際事務局手数料 < 現地代理人費用なら、マドプロがお得!
逆なら、国ごとに出願した方がお得。
現地代理人費用の方が高くなる場合とは、出願国数が増える場合に他なりません。
出願国数に比例して現地代理人の数も増えるから現地費用は高くなる一方、
国際事務局費用は一定です。
出願国数=マドプロ出願国数ではない
台湾、香港の他にも、東アジアはマドプロに対応していない地域が多いです。
→マドプロ加盟国一覧
うちは5か国出願予定だから、マドプロの方が安くなる、
と思っていても、そのうちの3か国がマドプロ対応していなければ、
マドプロ出願国数は2か国になります。
その結果、割高になる場合があり得ます。
中国を中心とした数か国に出願するという場合、
例えば、中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、
という間の悪い選択をした場合には、
マドプロ加盟国は中国だけになってしまいます。
この場合、通常の現地国個別出願とした方が良いでしょう。
その辺はどちらが安くなるのかお問い合わせいただければ回答いたします。
具体的な料金は、「台湾商標・香港商標・中国商標の直接出願」
(これ以外の国ももちろん扱っております)をご参照ください。
マドプロと各国出願の比較図
マドリッド協定議定書は、マドプロと省略して表記されます。
マドプロは、商標について、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局が管理する国際登録簿に国際登録を受けることにより、指定締約国においてその保護を確保できることを内容とする条約です。
マドプロを利用することにより、簡易、迅速かつ低廉な手段で、海外の締約国において商標の保護を受けることが可能となります。
従来の場合は、国ごとなので以下の通りでした。
締約国の官庁に商標出願をし又は商標登録がされた名義人は、その出願又は登録を基礎に、保護を求める締約国を指定し、本国官庁を通じて国際事務局に国際出願をし、国際登録を受けることにより、指定国官庁が12か月(又は、各国の宣言により18か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において商標の保護を確保することができます。
国際商標登録によって得られる効果
国際登録された商標は、指定国において、次の保護を受けることができます。
指定国とは、マドプロを通して商標登録をします、と宣言する対象国です。
国際商標登録をしたからと言って、すべての国で登録になるわけではありません。
指定した国についての手数料を支払い、指定した国だけの商標登録を
しなければなりません。商標登録する国を指定国といいます。
(1)国際登録日から、指定国の官庁に直接出願されていた場合と同一の効果。
(2)指定国の官庁が、拒絶の通報期間(12か月又は18か月)に拒絶する旨の通報をしない場合には同期間の経過時、又は後に拒絶する旨の通報を撤回した場合はその撤回時に、国際登録日から、その商標がその指定国の官庁に登録されていた場合と同一の効果。
(3)国際登録の存続期間は、国際登録日から10年(その後更新可能)。
マドプロ手続の概略
(1)国際出願及び使用言語
商標の国際出願をする場合には、本国官庁を通じて、国際事務局に願書を提出します。国際出願の言語は、本国官庁の定めるところにより、英語、フランス語又はスペイン語のいずれかの言語です。
(2)国際事務局による国際登録
国際事務局は、国際出願の方式審査をした後、国際登録簿に商標を国際登録します。国際登録された商標は、国際事務局により国際公表されます。
(3)国際事務局による指定国官庁への通報
国際事務局は、国際登録後、その旨各指定国の官庁に対して通報します。
(4)指定国官庁による拒絶の通報
指定国の官庁は、その指定国において国際登録に係る商標の保護を拒絶する場合には、上記(3)の通報の日から12か月又は18か月以内にその旨国際事務局へ通報します。
(5)セントラルアタック(国際登録の基礎出願・登録への従属性)
国際登録の日から5年の期間が満了する前に本国における基礎出願が拒絶又は基礎登録が無効若しくは取り消しなどとなった場合には、国際登録も取り消されます。その際、国際登録の名義人であった者は、救済措置として各指定国において国際登録を国内出願へ変更することができます。
(6)更新
国際登録の存続期間は国際登録日から10年です。国際登録の存続期間は更新することができます。指定国ごとに更新申請をする必要はありません。
(7)料金
一の通貨(スイスフラン)による料金支払いだけで、国際出願及び国際登録を更新することができます。
マドリッド協定議定書を利用した場合のメリット
(1)一度の手続で複数国について商標登録できる
日本からの外国出願のうち、約1/3がマドリッド協定議定書の締約国向け
(2)複数の商標権の管理が容易化
複数の商標権の存続期間の更新が、国際事務局に対する一回の手続で可能となるため、個別の権利についての期間管理が不要。
(3)事後手続きコストの低廉化が可能
各国ごとに登録料金の支払手続が不要になります。国際出願時に国際事務局および特許庁に一括納付し、その後の納付手続きが不要です。