拒絶理由通知への対応と戦略のまとめ

拒絶理由通知への対応と戦略のまとめ

当所の依頼人の方には特許出願が初めて、
という方も多いので、特許出願すれば
直ちに特許になると考えられる方も多いです。
しかし実際は拒絶理由通知とどう付き合うかが
特許実務の重要なポイントです。

拒絶理由とは一体何なのか?
そしてどう対応すべきなのか?について、
初心者からプロの方まで共通して考えておくべき
事項を以下の内容にまとめました。

拒絶理由や特許査定は、審査請求の後

特許出願の後に、印紙代が高額となる(軽減申請もあります)
「審査請求」という手続きをする必要があります。
審査請求の後に、ようやく審査待ちに
回してもらえるということになります。

審査請求の後は約1.5-2年程度の待ち期間を経て(早期審査もあります)、
それから審査結果の通知が来ます。
その審査結果の通知が「特許査定」
でなければ「拒絶理由通知」ということになります。

拒絶理由通知とは

拒絶理由通知とは、請求項に記載した特許の権利範囲
の記載が、そのままではOKではないというものです。
だいたい8割程度の出願が審査請求に対して
拒絶理由通知が出されるそうです。
直せばOKの場合と、直しても無理な場合がありますが、
権利範囲をいかに書き換えて、望む審査結果を得るか、
が特許実務上重要なポイントとなります。

意見書とは、補正書とは

そして拒絶理由通知を覆すために、
明細書に記載した事項をもとに、
「意見書」「補正書」を提出するという
流れになります。

もっともここで反論書面を提出しても
覆るかどうかわからないという不安もあります。
その辺を事前に打診するために、そして
こちらの主張を理解してもらうために、
「審査官面接」というのを行う場合があります。

特許明細書を書く際に重視すべきポイントとして、、
この審査対応の際に主張できる事項を
どれだけ明細書の記載に盛り込んでおくか
が焦点となります。事前予測能力が求められます。
やはり特許の場合、個人では難しいので、
代理人経由で作成することとなります。

拒絶理由通知の際に可能な補正とは

  • 請求項の記載については、審査段階では
    原則として補正することが可能です。
  • 一方で「発明の実施の形態」については補正できない
    と考えておいてよいと思います。

拒絶理由通知への応答では、補正の出来ない「発明の実施の形態」
の開示内容から導き出せる範囲で請求項の記載を変更します。
そこで、出願時に発明の実施の形態の記載を充実させることが大事になるのです。

補正により対応可能な範囲とは

このように、審査段階に入ってからの補正手続きで、
明細書に書いておいた事項が重要になります。
請求項は、出願時に書いていない事項に補正できません。
後だしにならないよう、出願時にできるだけ多くのことを
記載する必要があります。

拒絶理由通知が来てからの受任

拒絶理由通知が来てからの受任というのも
時々依頼としてはあります。
が、原出願で記載不十分だと、覆すのが
なかなか難しいかと思います。
中途で案件を移管するというのは、
自分で書いたが駄目だった、とか
前の代理人があまり上手でなかった、
ということが理由ではないかと思われるので。

特許明細書というのは、拒絶理由通知に対して
様々な補正をできるようにあらかじめ多くの
記載をしておく、というものです。
既に特許出願をしてしまっている状態だと、
こんなことも基礎出願に書いていない、
という場合もあります。
もちろん記載事項の範囲で可能な対応はしますが、
難しいこと場合もあります。

拒絶理由通知に対する優れた対応とは

拒絶理由通知に対する弁理士対応の巧拙というのは、
まず特許にできるか否か、という観点があります。
やっぱり依頼人として、特許にならないのであれば
出願した価値がない、ということになるので、
特許にできるスキルというのは代理人の重要なスキルです。

その一方で、特許になったとしても簡単に回避できる
ような特許請求の範囲にしてもらっては困る、
というのが、特に特許実務に精通したお客様の
場合には多く出される要望であります。

広い権利とはどういうことなのか

限定事項の少ない、いわゆる「広い権利」が
多くの場合求められますが、
権利範囲を広く書くということは、先行技術との
重複部分を含みやすいということも意味します。
もっというと、その分だけ拒絶理由が増えます。
記載要件の問題が生じる場合もあります。

広い権利と拒絶理由を解消することの兼ね合い

無駄な限定をしないということは前提として
重要なことではありますが、
ある程度踏み込んだ記載をしないと審査官は
特許査定として認めてはくれません。

ある程度明確な表現をしながら、製品としての
必須事項の範囲から外れないように
うまく表現をとらえていくというのが
審査対応として重要なこととなります。

拒絶理由通知に対する戦略的対応1

ですので、一見限定的に見えながらも、
実装製品を考慮すると実際はその限定事項は
一般的なので実のところあまり限定的ではない、
という内容を上手に権利範囲として盛り込みながら、
一見権利範囲を狭く見せるようで実は広い権利を取る、
というのが上手い審査対応ということになります。

案外実務に精通されている方でも、
単に広い権利を取るのがよいと考えられている
方が多かったりします。
しかしながら権利が広いと、無効資料も
見つかりやすいですし、限定解釈の余地も
よく見たら案外出てきたりしがちです。

一番大きいのが審査で話が平行線になって、
なかなか特許にならず、お客様に費用負担をかけてしまいます。
権利の実質的な広さを追求することが重要で、
それは製品態様に対して精通することが
大事なこととなってきます。

拒絶理由通知に対する戦略的対応2

あと、大手企業でよくみられる戦略として、
技術動向、製品動向を見ながら、
その変化する態様に合わせて権利範囲を
変化させるということです。

広ければ広いほどいい、と求めがちになりますが、
実際はどこまで限定していいのか、
を探っていくのが中間処理の重要なポイントです。
技術が進み、製品が標準化されてくると、
実装上この態様以外考えられない、考えなくてよい、
という状況も出てきますので、
そういう内容については思い切って
限定してもよいのです。

その一方で、なんとなく請求項に加えた記載事項が
製品態様からは外れることがわかることもありますので、
そういう部分の権利範囲は広げます。

そういう特許出願した後で、積極的な意味で
請求の範囲を変化させる、という戦略も一般的にとられます。

まとめ

以上のように、拒絶理由通知への対応といっても、
検討事項や対応すべき事項は多岐にわたるのですが、
9割以上の特許事務所、そしてクライアント企業の方は、
中間処理とは、単に特許にすればよいのだ、
という考え方の方が多いです。

知財の強い会社の知財戦略の決定的に違う部分は、
この中間処理対応であり、ここでの意識の差です。

拒絶理由対応をどう考えていくか、
は会社の知財力強化の上で検討すべき第一歩です。
具体的にはお問い合わせいただければと思います。