ECサイトの特許はビジネスモデル特許
ECサイト・ネットショップはビジネスモデル特許のカテゴリに入ります。
ビジネスモデル特許というとビジネスモデル全般を想定される
ことが多くみられるのですが、実際にはソフトウェア技術、
ネットワーク技術を介したものでないと特許を受けることができません。
一方で、ビジネスモデル特許の代表的なものとしては
電子商取引、ECサイト関連の特許が挙げられます。
その代表的なものとして「ワンクリック特許」というものがあります。
米国特許で、1999年9月成立のU.S. Patent 5,960,411です。
日本では特許4,937,434号および特許4,959,817号が該当します。
ワンクリック特許とは初回購入時に顧客の個人情報を登録し、
この際に顧客のコンピュータにIDデータを記録したcookieを送信して、
次回以降はこのcookieによって顧客を判別し、
簡単な手続きでの決済を可能にするシステムです。
電子商取引サービスとフィンテック特許
さらにさかのぼると、「State Street Bank事件」という判決が
1998年7月米国高等裁判所(CAFC)でなされ、
それ以前はほとんど認められていなかったビジネスモデル特許が、
その判決以降次々と認められるようになりました。
対象となる特許は米国特許第 5,193,056 号で、
投資資金の管理運用装置に関し、複数の投資(これをスポークと呼んでいる)を
一つにまとめて(これをハブと呼んでいる)運用し、投資した結果の儲けや損失及び
投資資金の管理運用に伴う種々の経費を各投資家に日々配分するというものです。
この発明によれば複数の投資家が別々に投資信託に投資する場合に比べて
経費を節約でき、税法上の利点もあるというもののようです。
このように「ビジネスモデル特許」と呼ばれるものの系譜を追っていくと、
基本的には金融取引に関するものが発端となっており、
さらには決済や商取引をネットワークを介して行うものも広く対象となります。
フィンテック特許(主に会計ソフト)の事例紹介
の方に具体的な事例をあげましたので、そちらを参照ください。
電子商取引サービスについては特許の対象になるのか
ネットワークを用いたシステム全般については基本的には特許の対象となりえます。
まず思い浮かぶのがオンライン決済や課金、さらにはセキュリティや
そのための暗号化、当然今話題となっているクラウドコンピューティング関連
は当てはまります。電子マネーに関する特許についても成立し、
大きく話題になったこともあります。
技術的に高度なものが特許の対象となるというのは
容易に想像できると思いますが、特許の審査で主張すべき進歩性とは、
「こうすれば便利になる」という程度のもので足りるので、ネットワーク、
インターネットを用いたビジネスモデル全般を考えられた方は、
特許による保護も1つの検討対象とされるとよいかと思います。
よく「これって特許になるのですか」という質問がありますが、
人の手だけで完結するものは特許の対象とならないものの、
ソフトウェアやネットワークを介するものについては、
多くの場合可能性があります。
疑問点などがありましたら、お気軽にご相談ください。
ECサイトに関する特許の事例・具体例
ECサイトに関してもいくつかの特許が成立しておりますが、
その中でも大手ECサイトの支払い決済機能との連携
についての特許を紹介します。
特許第5828146号 平成27年12月2日登録です。
特許請求の範囲は以下の通りです。
【請求項1】
複数のコンテンツで共有しそれぞれを適用し得る代表商品を識別するための商品識別情報及び前記代表商品の価格情報を対応づけて記憶する商品情報記憶手段と、購入対象となる商品を商品情報とともに仮想ショッピングカートに登録する商品登録手段と、前記仮想ショッピングカートに登録されている商品について当該商品の価格情報に基づいて決済処理を行う決済手段と、前記決済手段で決済処理が完了した商品の前記商品情報を含む購入履歴情報を購入履歴情報記憶手段に登録する購入履歴情報登録手段とを備える決済システムと通信可能に接続し、前記決済システムと連携して前記商品の販売を支援する商品販売支援システムであって、
(ここまではECサイトでショッピングカートを通して購入し、決済をする、という一般的な前提条件の話です。)
ユーザの端末からの要求に応じて、コンテンツ記憶手段のコンテンツのなかから前記コンテンツを選択するコンテンツ選択手段と、
前記コンテンツ選択手段で選択したコンテンツを適用する前記代表商品の登録を、当該コンテンツに関するコンテンツ情報及び当該代表商品の前記商品識別情報を含む前記商品情報とともに前記商品登録手段に対して要求する商品登録要求手段と、
前記ユーザの端末からの要求に応じて決済処理を前記決済手段に対して要求する決済要求手段とを備えることを特徴とする商品販売支援システム。
ここまで読んでも分かりづらいと思いますので、代表的な記載を抜粋します。
【0021】
大手ECサイトのデメリットについては、次の2点が挙げられる。第1に、店舗が多く、横並び、縦検索などことにより、価格面、ブランド面などの競争が激しく、個別店舗の特有ユーザの確保は難しい。第2に、全店舗向けの共通付加サービス以外の販売商品、特有ユーザの特性向けの個別付加サービスの提供は難しい。
【0022】
細分化ECサイトのデメリットについては、次の3点が挙げられる。第1に、商品展示から販売管理まで機能を網羅できるアプリの制作費用が高い。第2に、付加サービスを追
加する開発コストと運用コストが高い。第3に、ブランド効果がなく、新規ユーザとの信頼関係をすぐ築けない。
細分化ECサイトとは、「特定商品に特化・細分化したECサイト」
と定義されています。いわゆるブティック型ですね。
【発明の効果】
【0036】
(1)大手ECサイトが提供している支払い決済機能と連携することで、
→個別店舗や細分化ECサイトにおける独自の購入アプリの開発コストを低減し、
→個別の付加サービスの提供等により販売競争力強化の機会を与え、
大手ECサイトにおける手数料増加をもたらすという双方のWin-Winの関係を築くことができる。
(2)また、大手ECサイトに1つの代表商品を登録しておけば、複数のコンテンツに対応することができるので、コンテンツが増えても大手ECサイトでの登録商品数を抑え
ることができる。
要するに特定商品ECサイトを大手ECサイトに連携し、特定商品ECサイトの商品を選択した場合に、大手ECから決済手段を提供する、という内容です。大まかには。
ビジネスモデル特許の最近の事例
ビジネスモデル特許が大きく騒がれたのは10年以上前ということもあり、
ちょっと事例、具体例が古いなと思ったので検索してみました。
特許庁jplatpatで「ビジネスモデル」とこんなベタなワードで
権利化する人なんてめったにいないだろと思いながら、
検索してみたところ、6件も引っかかりました。
その中の1つ、マイクロソフトの特許5380531号を紹介します。
【登録日】平成25年10月4日となっています。
・利用者のコミュニティに関連する統計を集める
・利用者に特有の情報を集める
・制限された時間レンタルされる時間制限再生リストを自動的に生成
実際はもっと限定されていますが、ポイントはこの辺のようです。
この辺をネットワーク、オンラインを使ってやっています。
【請求項1】
リモートクライアントへのサービスによるオンライン配信に対して再生リストの中へメディアコンテンツ番組をプログラムするための方法であって、 前記サービスの利用者のコミュニティに関連する統計を集めるステップであって、前記統計が、前記メディアコンテンツの再生リスト形式の、メディアコンテンツの識別及び前記利用者のコミュニティによる関連する消費を含むものと、 利用者に特有の情報を集めるステップであって、前記情報が、少なくとも前記利用者のソーシャルグラフを含むものと、 前記統計及び情報に応答する前記再生リストの中に含めるためのメディアコンテンツを選択することによって、テーマとするイベントに対して標的化された1つ以上の、カスタマイズされ、制限された時間レンタルされる時間制限再生リストを自動的に生成するために、前記サービスを利用するステップであって、前記時間制限されたレンタル期間が、前記カスタマイズされた時間制限再生リストへのアクセスの期間の満了が前記テーマとするイベントの終了後に起こる前記テーマとするイベントの期間に基づいているものと、 オンラインインターフェースを介し前記リモートクライアントへ前記1つ以上のカスタマイズされた再生リストを配信するステップであって、前記配信が、前記時間制限されたレンタル期間に従っているものと、を含む方法。
特に検索に引っかかったのはここです。
【請求項3】
利用条項が、広告に基づくビジネスモデル、受信契約に基づくビジネスモデル、又は再生リストレンタルモデルの少なくとも1つを支援することを特徴とする請求項1記載の方法。
ネット広告に基づくビジネスモデルを利用可能な態様で
特許をとってるってことになります。
でないとこういう請求項作れませんから。