低価格サービスの仕組み
どこへ依頼するかを決める上で、どうしても安い方が良いというのは当然のことなので、当所でもできるだけ安く提供するように努めています。しかしどうしても限界はあります。
この限界を超えて安くしているケースは一体どうしているのだろうか、というのは一応説明しておく必要があります。
この仕事はほとんど人件費なので(それと特許庁費用)そんなに高コストになるはずはないのですが、無駄な人員に無駄なコストがかかり過ぎている特許事務所も少なくなく、その分が費用に跳ね返っているのが実情ではあります。
だから安くするといっても常識的な努力をすればかなりコストは下げられるし、外国業務に関してなら業界平均の3割カットというのは普通にやれば普通に達成できます。
問題は、これを超えて安さを強調しているところもあるということです。
過度に安いサービスは、依頼を受けて、その作業内容が打ち合わせるまでもなくはっきりしていて、そのまま処理して返して業務終了というケースに多く見られます。典型的なのは、大量出願をする超大企業の依頼案件です。依頼原稿の段階でかなり内容は出来ています。代理人が手を入れる部分を最小化させて処理を進めることになります。打ち合わせもしないことが多いです。
このことに対する是非はもちろん多く語られていますが、クライアント自身が多くのノウハウを持っていて、これにより発注先をコントロールしているのでこれはこれで完結しています。
しかしながら通常の場合は、依頼される方は知的財産に関する知識がこちらより少ないはずです。そういう方が単純に料金だけを求めて単に処理だけ依頼という形にするとどうなるか。
- まず依頼者の知的財産に関する知識経験が蓄積していきません。
- そして、特許を取ることの本来的な意図について意思疎通が図られないまま処理だけが進行するということになってしまいます。
インフォームドコンセントではないですが、これはこうで、という1つ1つの説明が必要になってくると考えます。限度を超えて安くするというのはここの部分をカットするということです。
コンサルテーションを必要とするかはケースバイケースですが、中小企業や個人のご依頼の場合はおそらくほぼ全員必要となるはずですので、ここを省略してまで安く提供しているところを選ぶべきとは正直私は思いません。
特許を取れればよいというのではなく、特許を取ることでビジネスにどう役立てるかが一番大事であるはずです。当所としてはこの点を心がけつつ、ここをカバーした上で採算の取れる程度の価格設定をしています。意思疎通部分をカットすれば安くなるし、それで安くしていると思われる代理人もいます。しかしそれでいいのですか?というのが私の見解です。
低価格サービスに対して
当所では比較的低価格とは言っても採算ラインを見てから設定しているので、こちらでは設定価格については問題ないのですが、低価格を前面に出しすぎると、品質の部分で疑問をもたれるのではないかという懸念が出てきてしまいます。
価格が安いというのはあまり代理人として自慢できる要素ではありません。
別に高くすべきという話ではなく、低価格で顧客に貢献するのはよいのです。
が、ある程度顧客との信頼関係が形成されてきたら、知的財産というのは課題が今山積みですから、ただ権利を取るに留まらない、既存顧客が抱える数多くの問題点をさらに解決していく方向に焦点を当てていくべきだと思います。それが出来ずに長期にわたって低価格を売りにするとすれば、それは能力面で限界を露呈している、そして顧客の問題に向き合っていないということでしょう。特許は取ったけどそれが価値を発揮しないというのは今特許に関わる事業者の間で一番の課題です。そうした問題への対処を本来重視していくべきでしょう。
価格を安くすることは悪いことではないですが、そこを売りにするのはいずれ卒業するようでないと弁理士としてはダメだと思います。開業間もない当所はそこを乗り越えることを目標にしています。