介護用品、福祉用具、リハビリテーション機器の特許の分類

介護用品、福祉用具、リハビリテーション機器の特許の分類

医療機器の特許についてはこちらを参照ください。

リハビリテーション機器は、
医療分野で機能維持、回復、向上を目的に利用される医療機器としてのリハビリテーション機器と、
介護分野で自立支援や生活支援を目的に利用されるリハビリテーション機器に分類される。
この分類は、特許庁 「平成29年度特許出願技術動向調査報告書(概要)リハビリテーション機器」を参照したものである。この内容に基づき、介護用品、福祉用具、リハビリテーション機器の特許の分類について説明していく。

「リハビリテーション機器」に含まれる要素技術、応用産業や関連する他の技術との関係は、
「社会実装」、「開発目的・課題」、「要素技術」、「リハビリ対象」の四つの部分から構成される。

介護用品、福祉用具、リハビリテーション機器の特許調査および特許出願にあたっては、
この4つの分類の観点からどれに該当するのかを明らかにすることにより、
よりスムーズに進めることができると考えられる。
後は発明の対象となるものの構成面、構造面と作用を図面及び文章により明らかにすることにより、
技術分野としては医療機器同様に比較的特許になりやすい分野であると考えられる。そこで、
「社会実装」、「開発目的・課題」、「要素技術」、「リハビリ対象」についてそれぞれ説明する。

「社会実装」は、使用場所や使用時期など社会実装時の状態を示す。

社会実装『使用環境』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015年)は 12,206件で、
「使用場所」では、「病院」が 1,729 件で最も多く、
「使用時期」では「慢性期(長期治療)」が 1,571 件で最も多く、
「機器態様」では「据置型」が 5,081 件で最も多い。
出願先国別では、「使用場所」で日本国籍出願人が最も多く出願しているのは
「病院以外のリハビリ施設」である。

社会実装『使用目的』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015年)は 12,206件で、
「使用目的(機能回復)」が 7,464 件で最も多く、次いで「使用目的(自立支援)」が 2,877 件、
「使用目的(機能向上)」が 2,170 件、「使用目的(機能維持・低下予防)」が 1,869 件である。

「開発目的・課題」は、リハビリテーション機器のニーズに該当する。

リハビリテーション機器を実現する際に技術で解決すべき問題点である。
リハビリテーション機器の開発をニーズから進めると多品種少量生産になり市場規模が小さくなる。
ここでは、医療と介護の両分野での利用や他の産業分野への応用等汎用性・共用性等が重要になる。

開発目的・課題『機能性』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は7,923 件で、
「操作性」が 2,141 件で最も多く、次いで「負荷・免荷」が 2,038 件、
「小型・軽量コンパクト化」が 1,689 件、「ウェアラブル」が 958 件である。

開発目的・課題『利用者』の技術区分別出願件数の合計(2001 年~2015 年)は 9,513件で、
「有効性・機能回復」が 5,099 件で最も多く、次いで「生活向上・改善」が 3,098件、
「バランス」が 840 件、「モチベーション維持・向上」が 801 件、「フィードバック」が 787 件である。

開発目的・課題『管理者』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は1,658 件で、
「リハビリ効果測定」が 749 件で最も多く、次いで「リハビリ計画作成支援」が 571 件である。

「要素技術」は、リハビリテーション機器の開発を実現するために必要な技術として
「ロボット応用技術(駆動系、制御系技術)」、「物理計測」、「生体信号計測」、「音響映像」、
「情報処理」、「材料」、「補助装具」、「生体刺激」の大分類に分けられる。
一般に「ロボット技術」は、主に「駆動系技術」、「制御系技術」、「センサ系技術」の三つから成る。
「センサ系技術」は「物理計測」、「生体信号計測」と関係性が深い。
さらに、コミュニケーションを目的としたロボットを始めとするリハビリテーション機器の
要素技術の特徴として「音響映像」がある。

要素技術『ロボットシステムとしての使用』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015 年)
は 973 件で、「マニピュレータ技術を使用したもの1」が 871 件である。

要素技術『制御系技術』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は3,073 件で、
「駆動制御」が 1,541 件で最も多く、次いで「センサフィードバック」が 928件、
「傾き制御」が 390 件、「加減速制御」が 385 件、「アシスト制御」が 362 件である。

要素技術『音響映像』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015年)は 1,158件で、
「映像(プロジェクション)」が 421 件で最も多く、僅差で「映像(カメラ)」が412 件で続き、
「音響(スピーカ)」が 346 件である。

要素技術『情報処理』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015年)は 1,283件で、
「動作認識」が 508 件で最も多く、次いで「情報入力」が 281 件、「画像認識」が257 件、
「統計処理」が 218 件である。

要素技術『ネットワークを利用するもの』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001年~2015 年)は 996 件で、
「データの使用目的(患者管理)」が 761 件で最も多く、
次いで「収集したデータの送信先(→リハビリ施設)」が 496 件 、
「収集するデータの種類(バイタル以外の生体情報)」が 464 件、
「収集するデータの種類(バイタルデータ)」が 419件である。

要素技術『物理計測センサ』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は 3,063 件で、
「状態(圧力)」と「状態(傾き・角度)」が共に 922 件で最も多く、
次いで「状態(加速度)」が 684 件、「状態(位置)」が 610 件、「状態(荷重・重量)」が 492件である。

要素技術『生体信号計測センサ』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015年)は 1,230 件で、
「生体電位(筋電位)」が 422 件で最も多く、次いで「バイタルデータ(脈拍)」が 371 件、
「脳活動(脳波計測)」が 234 件である。

要素技術『生体刺激』の技術区分別出願件数の合計(2001 年~2015 年)は 2,879 件で、
感覚刺激(屈曲)」が 726 件で最も多く、次いで「感覚刺激(けん引)」が 553 件、
「感覚刺激(マッサージ)」が 396 件 、「感覚刺激(光)」が 380 件である。
5位に「神経刺激(末梢神経電気刺激)」347 件が入っている。

「リハビリ対象」は、リハビリテーションの対象となる者について、原因や機能の観点から分析した。
本技術俯瞰図ではリハビリテーション機器の「開発目的・課題」があって、
その「開発目的・課題」を解決する手段として「要素技術」の研究開発が進められ、
その「要素技術」を結集して作り上げられたリハビリテーション機器が、
社会実装として政策・規制動向により、応用産業として利用される俯瞰図として構成されている。

リハビリ対象『原因』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は 12,206件で、
「医療系(その他)」を除くと、「医療系(脳卒中・その他の脳疾患)」が 1,473 件で最も多く、
僅差で、「非医療系(高齢化、フレイル)」が 1,459 件で続き、次いで「まひ」が 934 件、
「骨関節疾患」が 873 件、「脊髄損傷・その他の脊髄疾患」が 584 件である。
出願人国籍別では、おおむね同様の傾向であるが、日本国籍出願人、韓国籍出願人では
「非医療系(高齢化)」が最も多く、欧州国籍出願人では、「医療系(骨関節疾患)」が最も多い。

リハビリ対象『機能』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は 12,206件で、
「基本機能(歩行)」が 4,136 件で最も多く、次いで「基本機能(筋力低下)」が2,133 件、
「基本機能(姿勢維持)」が 1,011 件、「高度機能(日常生活)」が 1,005 件である。

リハビリ対象『部位(装具類含む)』の技術区分別ファミリー件数の合計(2001 年~2015 年)は 12,206 件で、
「下肢(下腿部、足関節、脚部、足指部)」が 4,857 件で最も多く、
次いで「下肢(大腿部、膝関節)」が 4,544 件、「下肢(股関節)」が 2,139 件、
「上肢(手関節、掌、手指部)」が 2,120 件、「上肢(上腕部、肘関節)」が 1,738 件である。