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フィンテック特許(主に会計ソフト)の事例紹介

フィンテック特許(主に会計ソフト)の事例紹介

いわゆるビジネスモデル特許と呼ばれる分野の中で、
実は一番メジャーなのがおそらくフィンテックと呼ばれる分野です。
そもそもフィンテックとは何か?というと、
金融を意味するファイナンス(Finance)と、
技術を意味するテクノロジー(Technology)
を組み合わせた造語で、近年注目を集めつつある分野です。
金融ITとか、金融テクノロジーなんかが該当するようです。
こういう新興の技術分野というのは、得てして特許というのは後回しに
なりがちなのですが、どうやら多数の特許が取得されているようで、
そしてついにその訴訟の第一幕が開いたというニュースが流れました。

freeeがマネーフォーワードを訴えたという事例です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO10469750Y6A201C1TI1000/

以下、主に会計ソフトの案件を中心の説明しますが、

なお、弊所ではこのようなフィンテック技術を含む
ビジネスモデル特許を多く取り扱っております。
ご依頼に際しては、

のページもご参照ください。

フィンテックとは

そもそもフィンテックって何だろうか。金融関連技術と言われても、
ということを最初に思ったものの、なかなかフィンテックの
分類分けというのが出てきません。
分類外の新しい金融関連技術が出てくる可能性もありますしね。
さらには金融工学という紛らわしい単語もあります。

そんな中、分かりやすいサイトが見つかりましたので
リンクをはります。

  • 電子マネー他決済関連
  • ビットコインのような暗号通貨
  • オンライン融資
  • 個人財務管理
  • クラウドファンディング
  • 投資支援
  • 経営業務支援

等に分けられるようです。

会計ソフトなどは経営業務支援に分類されそうですね。

また、フィンテックと言うと、ビットコインのような暗号通貨
がまず想像されるようですが、多分特許にはなじまないような気がします。
もちろん特許としては取れます。
ただし、普及しないと話にならないのと、
暗号の仕組みで特許をとるなら、仕様を変えてしまう気がするのですね。
特許により独占する業態とは違うように思います。

フィンテック特許の歴史

事例紹介に移る前に経緯を説明しますと、ビジネスモデル特許が
脚光を集めたのは、state street bank事件と呼ばれる事件からです。

米国特許の事例ですが、米国特許第5193056号で、
複数の投資信託を車輪のスポークとし、これを集めたポートフォリオを
車輪のハブとみたてて、複数の投資信託をまとめて運用するものです。
これにより、各投資家が資産状況を確認できるようにしたという特許です。
概要は正確ではないかもしれませんが、大体そういう内容です。

これが従来の基準ではビジネスの方法にすぎないから特許にならない、
という先例を覆して特許になったという事例です。
特許出願は1991年、訴訟は1998年で、これをきっかけに
ビジネスモデル特許が広がりを見せました。
なお日本では本特許は1999年に拒絶されていますが、
2000年あたりからビジネスモデル特許に関する審査体制も
変わり、数々の特許が取得されるようになりました。

フィンテック特許こそがビジネスモデル特許の中心

というように、ビジネスモデル特許を考えるとき、
フィンテック特許こそが実はその中核なのですが、
そこがあまり認識されていないようです。
マーケットの小さい市場の場合は特許といっても、
という話になりがちですが、フィンテックの場合は
大きい市場を対象としますし、放置するのはリスクが
大きいという風に思われます。

フリー株式会社(freee)の取得特許

ということで、事例紹介をするうえで、今回freeeが
マネーフォーワードに訴訟を提起したということなので、
これを題材に紹介していきたいと思います。
jplatpatに権利者「フリー株式会社」で成立している
特許で検索をかけると、2016年12月11日現在、
たったの2件でした。

提訴したのはその1件と思われますが、
こういうのって、本気で無効資料を探すと
結構つぶれたりするから複数特許で係争を仕掛けるのが
本当は常套手段なのですけどね。
いずれも早期審査対象出願のようで、早く権利化して、
早く行使をしたかったのでしょう。

2つしかないので、両方とも紹介してしまいます。
基本的にはクラウド会計ソフトに関連する事案ですね。
特許の具体的内容であり、その権利範囲を記載しているのが
「請求項」の部分であり、通常はその中でも「請求項1」
を見れば内容的にはほぼ把握できます。
なので、そこを見ていきます。

特許第5503795号(係争対象案件?)の概要

【請求項1】
(1) クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置であって、
ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバを備え、
前記ウェブサーバは、ウェブ明細データを取引ごとに識別し、

(2) 各取引を、前記各取引の取引内容の記載に基づいて、前記取引内容の記載に
含まれうるキーワードと勘定科目との対応づけを保持する対応テーブルを参照して、特定の勘定科目に自動的に仕訳し、
日付、取引内容、金額及び勘定科目を少なくとも含む仕訳データを作成し、
作成された前記仕訳データは、ユーザーが前記ウェブサーバにアクセスする
コンピュータに送信され、前記コンピュータのウェブブラウザに、仕訳処理画面として表示され、
前記仕訳処理画面は、勘定科目を変更するためのメニューを有し、

(3) 前記対応テーブルを参照した自動仕訳は、前記各取引の取引内容の記載に対して、
複数のキーワードが含まれる場合にキーワードの優先ルールを適用し、
優先順位の最も高いキーワードにより、前記対応テーブルの参照を行うこと
を特徴とする会計処理装置。

(1)は一般的な処理なので省略。
(2)は取引明細内のキーワードから、何らかのアルゴリズムで自動仕訳
をするようです。それ以外は特にポイントとなる内容はありません。
(3)がどうやら本件特許の要部のようです。明細書本文を読んでいくと、

【0054】
(キーワードの優先順位)
上述のように、対応テーブルには、取引内容の記載に含まれうるキーワードと
勘定科目との対応づけが保持されているが、一つの取引内容に
複数のキーワードが含まれる場合には分類の誤りが増加する可能性がある。

という状況があるので、自動仕訳のルールとして、
複数のキーワードに対して優先順位付けをして
優先順位の高い順に自動仕訳をしていく、という権利範囲になっています。

画像の説明

表示画面は以上の通りで、スキャンして読み込んだ
うちの仕訳用の情報が、真ん中の摘要タグに、
そして仕訳の結果が204勘定科目欄にあがっていきます。

特許第5503795号の具体的検討

その具体的な内容は以下の段落に記載されています。

【0055】
たとえば、「モロゾフ JR大阪三越伊勢丹店」という取引内容を例に考える。
この場合、「JR」の部分で対応テーブルを参照すると、
勘定科目として「旅費交通費」に分類されることとなるが、
最も可能性の高いのは「モロゾフ」にて贈答品を購入したという状況であり、
「接待費」に分類されるべき取引である。
つまり、複数含まれるキーワードのうち、いずれのキーワードが
取引の正確な分析の上で支配的であるかを判定できるようにすれば、
「モロゾフ JR大阪三越伊勢丹店」を対応テーブルが保持すべきキーワードから外し、
キーワード数を低減することができる。
少ないキーワード数でより多くのウェブ明細を高精度に分析して仕訳処理を行うために、
キーワードに優先順位を割り当てることで、精度を高めることが可能である。

優先順位の割り振りについては【0057】から【0060】
までの間で説明されています。
図の例ですと、「モロゾフ JR大阪三越伊勢丹店」
が摘要タグに該当し、これをもとに仕訳していくのですね。

詳細は資料を読み込まないといけないので、ある程度憶測込み
であることはご承知の上で読み進めください。

以上の記述だけ見ると、それだけで特許になるのか?と思われますが、
おそらくは「自動仕訳」という概念そのものが新規であると
認定されたのだと思われます。自動仕訳が先行技術として
存在すると認定されたなら、そこに優先順位付けをしました、
というのは当たり前すぎますので、特許になりません。
最初の権利範囲は純粋に「自動仕訳」のままで権利範囲を
記載していたのではないでしょうか。
審査官目線に移すと「自動仕訳」とはなんだ、それは得られる結果であって
発明の具体的な内容ではないのではないか、となります。
「自動仕訳」の具体的な内容を説明する中で、「優先順位づけ」
という説明になっていったのではないかと推測します。

この特許をつぶしたい場合、出願日:平成25年10月17日以前に
自動仕訳に関する文献や製品が世に出ているかどうかを探す
という作業が必要になってきます。
審査官は通常、特許文献や技報的な文献を中心にサーチしますので、
業界紙などはサーチ対象外となります。
そこでそのような文献があったらその特許は無効化するでしょう。
先行技術が提示された場合、権利者はその特許につき権利範囲の縮小を
模索することになりますが、特許の内容を見る限り、
権利範囲の縮小余地は少ないように思われます。
権利範囲の縮小余地がない場合は権利の実質的消滅を意味します。
権利範囲の縮小余地は、明細書の記載に基づくのですが、
手当された量は少ないように思われます。
まあ読む方からすれば読みやすいのではありますが、
こういう明細書は、係争、訴訟が起こった時に不利です。

権利範囲が広いので、無効資料すなわち「自動仕訳」が説明された資料を、
必死になって探す、というのが提訴された側の常套手段でしょう。

ざっと調べた限り、Saasというのが2009年ごろのサイトに掲載が
あるようですので、この辺で証拠能力のある文献を見つけてくると
争うことができそうな感じですね。
実際はもっといろんな文献があるでしょうが、多分特許関係の文献は
少なかったのであろうと思われます。

特許第5936284号

せっかくなのでもう1つの案件も解説します。
こちらも見てみると結構権利範囲が広い感じですね。

【請求項1】
(1) クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置であって、
ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバを備え、前記ウェブサーバは、
ウェブ明細データを取引ごとに識別し、

(2) 各取引を、前記各取引の取引内容の記載をキーワードに分節し、
各キーワードに対応づけられた1又は複数の勘定科目の出現頻度を参照して、
特定の勘定科目に自動的に仕訳し、

(3) 日付、取引内容、金額及び勘定科目を少なくとも含む仕訳データを作成し、
作成された前記仕訳データは、ユーザーが前記ウェブサーバにアクセスする
コンピュータに送信され、前記コンピュータのウェブブラウザに、
仕訳処理画面として表示されることを特徴とする会計処理装置。

(1)(3)はどちらもどの会計ソフトにもある処理なので省略。
ポイントは(2)でしょうか。特許第5503795号と違うポイントですね。

表5を見るのが一目瞭然です。
画像の説明

仕訳データの中で、「サクラ」とあればほぼ通信費なら、
全部通信費に仕訳すればいいだろう、って話です。

感想

成立した特許は以上の2件ですが、出願公開段階では
5件の特許出願があります。この市場を守り抜くには
特許出願件数としては少ない感じがしますね。
要らぬお世話ですが、訴訟に耐えうるほどの
手厚い明細書の開示とも思えません。
無効資料が見つかるかどうか次第ですけどね。

と同時に、こんなレベルでも特許になりうる、
というのがフィンテック特許の現状でもあります。
参入する市場が十分に大きい技術については、
いずれこういう風に訴訟になっていく可能性
も十分にありますので、早い段階で特許を
取得していく必要性はありそうですね。

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