画像処理の特許
国内特許出願でも、画像処理技術の特許というのは電気機械分野、
特にソフトウェアの分野では非常にメジャーなものの1つですが、
ではどんなのって言われると案外説明に困るものです。
画像処理と言っても静止画像だけではなく動画像もありますし、
画像の変換・強調、コンピュータグラフィックス、
画像認識の特許など様々な分野に分かれています。
画像処理と言っても、画像を取り込む画像入力、ノイズ除去、
歪み除去、明るさの補正なんかもありますし、
特別な部位を抽出して処理するような特徴抽出技術、
そしてそれを加工・編集する技術があります。
画像認識の特許については、他分野への応用という
方向に進みつつあることからも、特徴を抽出して
分析するということでくくられる技術が多い印象があります。
特許的に見ると画像処理とは技術の境界線はあいまいです。
自分の取扱い案件の1つを示すのもなんだかなあということなので、
適当に公報を検索して、それを題材に解説する
のが良いのかなということで検索してみます。
変に独創性が強いものよりも、なんでこんなものがという方が
説明的には伝わりやすい気がするので、そういうものを取り上げます。
特許申請の手続きについては「国内特許出願」を参照下さい。
2015年7月1日から8月31日までの特許公報掲載分で、
「画像処理装置」で検索したら325件も出てきました。
会社別でいうと、もう大企業ばっかりです。
オリンパス、キヤノン、富士ゼロックス、とか。
クレームの末尾表現については大体定型表現があるので、
大量出願する会社は大体そういう表現にさや寄せしてきますね。
となるとどういう案件が良いか。
説明が分かりやすい案件となると結局医療機器になるのかなあと思いながら、
特許第5751899号をピックアップしてみました。
特許権者は日立メディコです。普通は図面を取り出すのが分かりやすそうですが、
本件は図面出すまでもなく説明できそうです。
【請求項1】
医用画像撮像装置により被検体を画像化した映像信号と、前記被検体を特定する個人情報と、を含む動画ファイルの各コマにおいて、前記個人情報の抽出対象となる領域を指定する領域指定手段と、
前記領域指定手段により指定された抽出対象領域に対して個人情報の抽出処理を行う個人情報抽出手段と、
前記抽出された個人情報を消去、若しくは前記個人情報を非特定情報に置換する個人情報削除手段と、
前記動画ファイルを構成する連続するコマの差分値を算出する差分処理手段と、を備え、
前記領域指定手段は、前記差分値が所定の閾値未満の場合に、直前のコマに対して指定した前記抽出対象領域と同じ領域を前記直前のコマに連続するコマにおける抽出対象領域として指定し、
前記差分値が前記所定の閾値以上の場合前記直前のコマに連続するコマにおける抽出対象領域を新たに指定する、
ことを特徴とする医用画像処理装置。
医療画像の動画があって、その動画から個人情報部分を削除する技術だそうです。
で、動画のどこの部分を抽出するか、というのが発明のポイントとなっているようです。
動画は複数のコマ、フレームからなる訳ですが、その差分値を算出して、
「前記差分値が所定の閾値未満の場合に」、直前のコマに対して指定した前記抽出対象領域と同じ領域を前記直前のコマに連続するコマにおける抽出対象領域として指定し、
「前記差分値が前記所定の閾値以上の場合」
前記直前のコマに連続するコマにおける抽出対象領域を新たに指定する、
こんだけです。
つまり、フレームが変わっても何も変わらなければ
前のフレームの抽出領域をそのまま使って、
大きく変わったら領域を再指定するよって話です。
内容を理解するまでは面倒ですが、理解してしまうと当り前な感じですね。
だって動画のコマ数なんて当然膨大なわけですし、
基本的には被写体はそんなに激しく動きません。
動画の画像処理で前フレームのデータを流用するなんてあまりにも一般的です。
しかし、特許になってしまうとこれを実施するのは特許侵害になる訳です。
そして特許係争で出てくる特許なんて大体このレベルです。
「画像処理技術」なんて言ってしまうとよほど高度なイメージがわきますが、
進歩性についての論理展開ができてしまえばこの程度でも特許になってしまいます。
梅澤国際特許事務所の弁理士は、このような画像処理技術についても、
適切に理解した上で受任することが可能ですので、
国内特許出願・外国特許出願をはじめ、お気軽にご相談下さい。
特許申請の手続きについては「国内特許出願」を参照下さい。
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